海外マクロ・コメント
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2009年11月19日 02:03
○FRB高官が「2012年以降の利上げ開始を予想」という誤報
昨日の市場では、「セントルイス連銀総裁:米利上げ開始、2012年以降の可能性も」(ブルームバーグ)という報道が注目された。16日のバーナンキ議長の講演を初め最近のFOMCメンバーの発言ではハト派的なトーンが目立っているため、これは一見すると地区連銀総裁から利上げへの時間軸を延ばそうとする動きが出てきたようにも解釈できる。ただ、実際の講演資料やセントルイス連銀のニュース・リリースに基づけば、このヘッドラインはミスリーディングと言わざるを得ない。
まず、セントルイス連銀のホームページに掲載されているパワーポイントの資料を見ると、当該部分のページは以下のようになっている。
ゼロ近辺の政策金利(A Near-Zero Policy Rate)
・ 過去2回の景気後退:景気後退が終了してから2.5〜3.0年後に利上げを開始(Past two recessions: 2.5-3.0 years after the recession end before policy rate increases began)
・ 今回は「あまりに低くあまりにも長期間」という議論がFOMCで重視される可能性(The “too low for too long” argument may weigh heavily on the FOMC this time)
・ 量的緩和を踏まえると市場が金利に焦点を当てていることは残念(The market focus on interest rates is disappointing given quantitative easing)
セントルイス連銀のニュース・リリースでは、この部分が以下のように記されている。
「最近の景気後退が夏場に終了したと想定するならば、そしてFOMCが過去と同様に行動すると想定するならば、これはFOMCが2012年初めまで利上げを開始しないということを意味する可能性がある。確かに、ブラード総裁は、FRBは金利をあまりにも低くあまりにも長期間据え置いて住宅市場のバブルに寄与したという批判から生じた懸念をFOMCは重視するだろうと述べた。
『量的緩和を踏まえると市場が金利に焦点を当てていることは残念だ』と彼は述べた。市場は依然として金融政策は金利の変更であると厳密に考えている−FRBは過去1年間にわたり量的緩和を通じて成功裏に政策を運営してきたというのに。市場は金利政策よりも量的緩和策に焦点を当てるべきだ」
ここから明らかになのは、(1)「2012年初め」というのは過去2回の事例を現在に機械的に当てはめた想定にすぎないこと、(2)ブラード総裁自身は過去のそうした政策が住宅バブルを発生させたという批判が今回は重視されると考えていること、(3)現在は金利変更よりも量的緩和策の方が重要とみなされていること、である。このため、「市場は金利政策でなく量的金融政策に注目すべき=米セントルイス連銀総裁」(ロイター)というヘッドラインの方が実際の講演内容を正しく伝えていると言えよう。
ブラード総裁はこれらの点に触れた後で、以下のように金融政策に関する議論を締めくくっている(セントルイス連銀のニュース・リリースによる)。
「『今後の金融政策にとって主要な課題は、インフレを生じさせることなく、ゼロ近辺の金利で経済への支援を引き続き提供しながら、いかにして資産買い取りプログラムを調整するかだ』とブラード総裁は述べた。中期的なインフレはFRBがこのプログラムをどうするかによって決定される。ブラード総裁は、経済に関する新たな情報が明らかになるにつれて資産買い取り策を調整できるような状況に応じた(state-contingent)政策をFOMCが採用することが望ましいと述べた」
このように、ブラード総裁は(来年3月末で終了が予定される)資産買い取り策の動向が今後の金融政策の最大の課題であると述べただけであり、それ以降の利上げのタイミングについて新たな主張を行ったわけではないことは明らかである。
○10月消費者物価(CPI)コアは自動車の一時的要因で押し上げ
10月消費者物価(CPI)では、食品・エネルギーを除くコアが前月比+0.2%を上回り、前年比でも+1.7%と9月の+1.5%から加速した。ただ、内訳をみるとコアCPIの上昇分の約9割は自動車価格の異例の上昇で説明できる(新車は前月比+1.6%で1981年5月以来、中古車は同+4.1%で1980年9月以来の大幅上昇)。BLS(米労働統計局)のアナリストはMNI通信に対し、自動車買い替え促進策による価格引き下げの反動と自動車の在庫調整が進捗した影響が現われたとの見方を示している。CPIでの自動車価格の上昇は生産者物価(PPI)の自動車価格の下落(乗用車が同-0.7%、小型トラックが同-5.2%)とも食い違っている(PPIでは、モデルイヤーの切り替えに伴う品質調整からテクニカルに自動車価格が押し下げられた)。10月には自動車価格が逆方向に作用したことでPPI消費財とCPI財の動向は足元で乖離しているが、自動車の一時的な要因が剥落すれば今後はPPI段階の財価格の鈍化がCPI財にも波及してくると考えられる。
今回のCPIでもう一つ注目されるのは、CPIコアで合わせて39.1%ものシェアを占める家賃関連項目(シェアは居住用住宅家賃が7.7%、帰属家賃が31.4%)が安定を続けていることである。居住用住宅家賃は前月比-0.1%、帰属家賃は同0.0%となった。6ヵ月前比年率でみても、居住用住宅家賃は0.0%、帰属家賃は+0.2%と足元ではほぼゼロとなっている。賃貸住宅の空室率が上昇を続けるなか、当面は家賃が大幅な上昇に転じることは考えにくく、この要因は今後もCPIコアの上昇を抑制する公算が大きい。
○住宅では減税前の駆け込み需要の反動減が顕在化
10月住宅着工件数は前月比-10.6%の年率52.9万戸と大幅に下落した。内訳をみると、振れの大きい多世帯住宅が同-34.6%の年率5.3万戸と落ち込んだことに加え、一世帯住宅も同-6.8%の年率47.6万戸と9月の増加分(同+6.2%)が反転した形となっている。これは当初は11月末を期限としていた住宅減税の終了前の駆け込み需要が一巡したことによるものと考えられる。
住宅減税は来年4月末まで延長することが決定されたが、今のところ住宅販売には持ち直しの兆しは見られない。MBA(モーゲージ銀行協会)が発表している週次の住宅購入目的モーゲージ申請指数をみると、昨日発表された11月13日に終わる週も前週比-4.7%と10月第2週から6週連続で減少しており(累積減少率は31.1%)、1997年11月以来の低水準となっている。
情報提供:バークレーズキャピタル証券株式会社
