アジア各国の金融危機対策
アジア各国の金融危機対策
2008年10月 2日 13:53
●韓国 経営計画立案で大苦戦、金融危機の余波
米国発の金融危機やウォン安により、企業が来年の経営計画を立てられずにいる。米下院が、金融危機を収束するための金融安定化法案を否決したことで金融危機連鎖の不安が高まり、さらにウォンの対米ドルレートが9月30日に5年4カ月ぶりのウォン安を記録。各社の業績悪化が見込まれる上、輸入企業は為替損益が拡大。新事業や投資に向けた資金調達も困難な状況となっている。
LG電子のデジタルディスプレー事業本部は最近、3度目となる来年の事業計画の修正を行った。米国発金融危機で消費心理の委縮が予想以上に深刻化するという展望が出た上、ウォン安も同様に進んでおり、最悪の状況を想定して新たな事業計画書を作成した。サムスン電子はこのほど、来年の経営計画立案に着手。だが、ウォンの対米ドルレートが大幅に下落したことで、作業をストップさせた。現代・起亜自動車グループは12月に経営計画を立てる予定。毎年この時期に経営条件の基本的な調査に着手するが、不安要素が多いため財務チームはまだ動いていないという。東源F&Bはこれまで、経営計画樹立のためのワークショップを年末に開催していたが、経営環境の悪化が予想されるため四半期ごとの開催に変更。6日に第4四半期(10〜12月)の経営計画ワークショップを開いて具体的な対策を練る方針だ。
■Q3は実績悪化
企業の第3四半期(7〜9月)の実績は軒並み悪化する見通しだ。韓国経済を支えている輸出企業の実績も悪化するが予想される。欧米など主要市場の景気停滞で、半導体やディスプレー、携帯電話など電子業種の主力製品が予想以上に不振で、第3四半期の営業利益は前期比30〜70%減少するものと見られている。証券会社の実績展望によると、サムスン電子の第3四半期の営業利益は前期の半分の水準の9,400億ウォン(約840億円、東洋総合金融証券)、LGディスプレーは前期から80%以上減少の1,430億ウォン(有進投資証券)と大幅減が見込まれている。業界関係者は、「これでも輸出企業は状況がよい方」と話す。米ドルで原材料を購入する輸入企業は為替損失が膨らみ、赤字を免れることはできない見込みという。 1日のウォンの対米ドルレートは1,200ウォンを超えた前日から20.0ウォン上昇して1米ドル=1,187.0ウォンで取引を終えた。先月1カ月間、ウォンの対米ドルレートは130ウォン下落。SKエネルギーはこれにより、為替差損が3,900億ウォンに拡大した。業界では、製油4社の為替差損は合計で9,100億〜1兆ウォンに達するとみている。
■資金調達も困難
企業はまた、新事業や買収・合併(M&A)、設備投資などのための資金の確保が難しい状況となっている。全国経済人連合会が600大企業(売り上げベース)を対象に行った調査では、81.7%が「資金確保が難しい」と回答。金融業界では、企業への融資を控えている上、債権発行を通じた資金調達金利は天井知らずに上昇した状態だ。大宇造船海洋の買収に乗り出したGSやハンファグループも資金の調達が難航する見通し。業界関係者は「来年の事業計画の核心となるのは資金調達戦略」と指摘。売り上げ競争以上に資金調達競争が激化すると予想される。韓国経済新聞などが報じた。
●香港 金融管理局、5項目臨時措置を発表
香港金融管理局(HKMA)は9月30日、銀行システムへの流動性供給を目的とした5項目の臨時措置を実施すると発表した。信用収縮による銀行の資金繰り悪化リスクを回避するため、銀行がHKMAからの融資を受けやすくするなどの内容。期間はきょう2日から半年間とし、必要に応じて延長や追加措置の実施も視野に入れている。
臨時措置の内容は以下の通り。
【1】銀行が割引窓口(discount window)を通じて流動資金を調達する際に受け付ける担保を、従来の外為基金債券だけでなくHKMAが認める米ドル資産にも広げる。
【2】銀行が割引窓口を通じて流動資金を調達する際、通常は翌日返済の貸出期限を3カ月に延長する。
【3】銀行が割引窓口を通じて流動資金を調達する際、担保として差し入れる外為基金債券がその銀行が持つ外為基金債券総額の50%を超えた場合に課されていた罰則金利を免除する。
【4】HKMAは銀行の要求を受け必要と判断すれば、米ドルと香港ドルの外為スワップ取引に応じる。
【5】HKMAは銀行の要求を受け必要と判断すれば、担保の提供を条件に最長1カ月の融資に応じる――。
このうち【1】〜【3】は、銀行がHKMAから流動資金を借りるための割引窓口制度を拡大するもの。米ドル資産が担保にできるようになり、罰則金利もなくなることから利便性が高まる。貸出期間も延長し、短期金利の安定を図る。
さらに【4】【5】では、割引窓口制度の枠外でも必要に応じて銀行に資金を供給する。
■行政長官「果断に対応」
HKMAの任志剛(ジョセフ・ヤム)総裁は、「香港の銀行システムは現在も健全で安定している」と強調。今回の措置は世界的な金融危機に対応するため現行システムを強化することが目的であり、特定の銀行や銀行システムに問題が発生しているということではないと説明した。 1日付香港各紙によると、任総裁と曽俊華(ジョン・ツァン)財政長官は先週末の時点で、今回の金融安定化措置の発動を決めた。HKMAは先月18日に15億HKドル(約200億円)、25日に38億8,300万HKドルを市場に供給したが、香港銀行間金利(HIBOR)の引き下げにはつながらず、中小銀行を中心に資金繰り悪化懸念が高まっていた。曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官は30日、HKMAの発表に先立ち「当局は必要なときに果断かつ適切な対応を取る」と強調。1997年のアジア金融危機と2003年の新型肺炎SARSによる経済危機を引き合いに、今回の危機も乗り切る自信を示した。
●台湾 株式市場危機、政府が相次ぎ対策
米国発の世界株安で政府が対応に追われている。行政院金融監督管理委員会(金管会)は借株取引の規制に続き、上場・店頭公開市場での空売りを全面的に禁止することを決定。また総統府財政諮詢小組が新たな政府系ファンド(SWF)の設立や相続税の税率引き下げの検討を始めるなど、市況回復に向けた政府の動きが慌ただしくなっている。
金管会は先月30日夜、上場・店頭公開市場で今月14日まで空売りを全面的に禁止すると発表した。金管会は先月21日にETF(指数連動型投資信託)の台湾50指数、台湾中型100指数を構成する合計150銘柄の空売りを2週間禁止する措置を開始。29日には借株取引の規制や市場での流言取り締まり強化を発表していたが、30日に米下院が金融安定化法案を否決したことで市況はさらに悪化、より踏み込んだ市場支援策を導入した。
■1日株式は小幅反発
1日の台湾株式市場は3%を超える下落幅となった前日から一転、反発して引けた。加権指数の終値は前日比44.73ポイント(0.78%)高の5,764.01ポイント。政府の市場支援策に加え、米上院で金融安定化法案が再審議されることが好感された。ただ空売り規制などにより、売買代金は628億5,800万台湾元にとどまっている。
■SWF設立検討
蕭万長副総統が主宰する景気対策チーム、総統府財政諮詢小組は30日、政府の外貨準備などを資金源とするSWFの新設を検討した。規模や設立時期などの詳細はまだ固まっていないが、優良銘柄への長期投資や不動産、エネルギー方面、またDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)やTFT―LCD(薄膜トランジスタ液晶ディスプレー)企業同士の合併促進などに使われるという。
台湾ではすでに行政院国家発展基金管理会(国発基金)が設けられているが、財政部の李述徳部長は「国発基金は市場の(一時的な)援護、SWFは恒常的な投資運用と目的が違ってくるのではないか」と説明している。
■相続税引き下げで市場に資金を
財政諮詢小組はまた、資金の株式市場流入増加を狙い、相続税と贈与税の引き下げについても提言している。最高で50%という現行の相続税率を一気に10%に引き下げる案。相続税の引き下げについては行政院ですでに作業が進んでいるが、財政諮詢小組でも同時に引き下げを主張していくようだ。
■年金資金300億元が市場へ
労工退職金条例により集められた年金準備資金のうち300億元が、早ければ今月初旬にも株式市場へ流入する可能性が出てきた。年金準備資金は、群益や国泰、複華、元大、ING、富邦などの証券会社10社へそれぞれ30億元ずつ運用を委託することが内定している。この契約が今月6日前後に相次ぎ結ばれる予定で、各社による年金準備資金の運用が始まることになる。1日付中央社電、経済日報、工商時報などが伝えた。
情報提供:バークレイズキャピタル証券株式会社
